生命・医療各論より「医療保険制度」について

皆さん、こんにちは!

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メンタルケアと生命・医療倫理(松浦雄一郎:広島大学名誉教授)

より、生命・医療倫理各論から抜粋して掲載します。

Ⅱ‐7 医療保険制度

医療保険制度については、助け合いの根本理念の上に立っているものであるが、現在の保険制度下では国主導型に国民皆保険という名のもとに実施されている。そこでこの保険制度は国家保険といったものと理解され、当然の結果としてこの制度を受ける側からは最高の医療を、制度実施側からは基準の医療をといった、両者の意図の間には大きな格差が存在している。また、場合によっては保険証至上主義的な状態となり、患者さんは保険証をもって同一疾患で医療機関を次から次へと回って歩く、即ち、医療従事者不在で保険証と患者さんが歩き回ることになったり、医療機関は医療機関で患者さんを診るよりも保険証を大事にし、先に見るとか言った、医療の中で患者さんは不在で保険証と医療従事者だけといった歪められた医療構造が成立する。

反面、現在の保険制度の下では、医療従事者にも、患者さんにも自由が入り込む余地は殆どない。こうした関係に対する対策としては、今医師会は混合診療として弊害があり、罪悪であるという文言のもと、その導入に対しかまびしく反対しているが、自費診療、任意保険等の併用の導入ということも一考すべきことであろう。

また、わが国の医療行為に対する診療報酬は、ことに勤務医の場合は直接医療担当者に支払われる仕組みとなっていず、また医療従事者の才量などは考慮されていず、病院開設者の方に診療報酬が支払われ、医療行為とは関係ない形でサラリーとして支払われるので、患者さんの本意は必ずしも担当医療従事者に伝わらないことも経済流通の原則からははずれているのである。即ち、いい意味で、患者さんも医療従事者もコスト意識を持つべきである。

これから診療を受けるごとに3割負担という制度が打ち立てられた。全実質医療費のおおよそ5割5分は医療を受ける受けないに関わらず、国民は保険掛け金として先払いをしているので、これからは医療費の8割5分を支払うということであり、国民皆保険などといういうことではなく、さらには国家管掌における保険と言われる筋書きはなくなるのである。つまり、自費診療と変わりなくなり、初期の助け合いの精神からは大きく外れることとなる。

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現行の健康保険制度では、西洋医療と一部の補完代替医療にのみ適用されているが、精神科・心療内科では、健康保険での適用内の治療は極めて少なく、薬物療法(向精神薬等)や生活指導、認知行動療法、臨床心理士や公認心理師による面接による支持的療法(カウンセリングなど)、作業療法があるが、効果性という部分では患者に選択の余地はなく効果性も個人差があり、もっと保険適用の治療法を増やすべきだと考えます。

例えば、自律訓練法、筋弛緩法、交流分析、精神分析療法、バイオフィールドバック療法、家族療法、ゲシュタルト療法、箱庭療法なども保険適用すべきであり、更に言えば、東洋的医療である、森田療法、断食療法、内観療法、太極拳なども適用すべきであると考えます。

もっと言えば、科学的根拠(普遍性・再現性・客観性)は整ってはいないが、代表的な補完代替療法である、国家資格者である臨床心理士や公認心理師が行わない民間療法でのカウンセリング(スピリチュアルカウンセリング、ヒプノセラピー、ヒーリングなど)も保険適用に加えるべきで、患者の選択肢を増やすべきであると考えます。科学的根拠の整っていない補完代替療法でも、その効果性が実証されているものは多く、厚生労働省が積極的に認可すれば治療法が広がり、患者の治病率も増加する可能性が増えることは容易に想像ができます。

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セッションを積極的に患者に提供でき、補完代替療法の療法士と患者とのマッチングを図ることにより、患者の選択肢を重視し、自分に合った治療法を選択・統合できる利点があり、これまでにあまりない、革新的なプラットフォームであるので、補完代替療法士や精神的な悩みにお困りの患者には、ぜひ積極的に参加・利用を勧めたいと思います。

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